【井熊コラム#23】「AI投資バブルと次の時代」

· 井熊コラム

あと2週間足らずで2025年も終わろうとしています。

今年はアメリカのトランプ政権の関税政策への懸念で幕を開けましたが、終わってみれば日本企業は増益路線を維持し、大過なく乗り切ったと言っていいのでしょう。一方で、世界市場を取り巻く大きなリスクが見えてきた年でもあったと思います。

その一つがAIへの巨額投資に関わるリスクです。AIが経済構造に大きな影響を与えることは論を俟ちませんが、日々の業務や生活の中で目に見えた成果が上がってくるのはこれからです。問題はそれが巨額の投資を回収し、投資家が利益を享受するものになるのかです。個人的には巨額投資の全てを回収するほどの成果を期待することはできず、相当程度のバブルが含まれていると考えています。ただし、AIへの巨額投資を否定している訳ではありません。世の中は冷静なペースで革新される訳ではないからです。

革新的な技術や経済構造が顕在化すると往々にしてバブルが発生します。ネガティブに見られがちですが、バブルには進化に欠かせない功罪両面があります。1990年前後、日本の経済システムへの過剰な期待感からバブル経済が発生しました。巨額の負債の処理は今でも日本経済の足かせになっていますが、この時代に日本の開発事業、設計、建築の技術・ノウハウは大きく発展しました。その頃の経験がなければ、今の東京の街並みも観光業の活性もなかったかもしれません。2000年前後にはITバブルが発生し数多くのITベンチャーは破綻しましたが、今活躍しているIT企業の多くを産み出しました。

バブルと呼ばれる経済現象は砂嵐のようなものだと思います。積みあがった砂の多くは霧散しますが、砂山の底には次の時代を支えるしっかりとした山ができているからです。まさに資本主義経済のダイナミクスと言えます。2026年はしっかりとした山を見極める年になるのかもしれません。

2025年はお世話になりました。

2026年もよろしくお願いいたします。

よいお年をお迎えください。