【井熊コラム#19】「温暖化対策“緩和”と“適応”」

· 井熊コラム

今年の夏は大変な暑さになりました。日本では最高気温が41度を超えましたが、トルコでは50度を超えたそうです。世界中の人が、「いったいどこまで暑くなるのだろう」、と怖れに近い感覚を抱いているのではないでしょうか。

1990年代の前半から世界は温暖化に向けて取り組んできました。取り組みの中心となってきたのは、温室効果ガスの発生を減らすなど温暖化の「緩和」策です。世界中で膨大な量の再生可能エネルギーが導入され、今や太陽光発電は原子力発電や火力発電を凌ぎ、最も安い電源となりました。しかし、世界の経済活動の膨張は「緩和」策を上回り、いまだに温室効果ガスの排出量も石炭の使用量も減っていません。一方で、以前から専門家が指摘していたように、温暖化がもたらす極端な乾燥と湿潤によって、世界中で大規模な山火事、豪雨、台風が頻発するようになっています。目先で温室効果ガスの排出量を減らしても、温暖化による被害を食い止められないことが明らかになりつつあります。

そこで急速に要請が拡大しているのが、温暖化の被害に備えるための「適応」策です。今のところ、豪雨や台風自体の勢力を技術的に減らすことはできませんから、「適応」のためには、豪雨や台風に耐えるようにインフラや設備を改修する、被害の少ない地域に移住する、豪雨や台風の到来をできるだけ早く知ることによって被害を最小にする、などが必要になります。しかし、インフラや設備の改修には莫大な費用と長い時間がかかりますし、移住には限界があります。比較的早期に効果を期待できるのが、デジタル技術などを駆使した温暖化による被害の予測です。分かり易いのが天気予報の精度や密度を高めることですが、水関係のインフラ(貯水池、河川、農地等)を統合的に管理し水害や渇水を最小にするための制御も効果的です。土砂崩れや洪水を減らすために山や堤防などの崩壊リスクを分析するシステムなども考えられます。いざという時に遅滞なく避難するための情報システムは必須でしょう。

「緩和」策では、投資資金が風力発電や太陽光発電を世界中に普及させました。「適用」は人命に直結するテーマでもありますから、「緩和」で培った知見を集約して迅速な策が講じられることを期待したいと思います。