RICHの知財アドバイザーとして事業者の支援をしていただいている龍華 明裕先生にお話をお伺いいたしました。

■現在のポジションとこれまでの経歴について簡単に教えてください。
キヤノン株式会社で通信回路の開発を行う中で、技術者が相談をできる弁理士が不足していることと、特許の重要性を知り、弁理士になる決意をしました。
その後、日本と米国の特許法律事務所に各3年間勤務し、1998年にRYUKA国際特許事務所、2013年にRYUKA米国法律事務所を設立しました。
現在は、日本弁理士・米国弁護士(カリフォルニア州)として両事務所の所長と、RICH知財顧問を務めています。
■得意な支援領域を教えてください。
特許出願は未来への投資活動なので、投資前にエグジット、つまり特許をどう活かすのかを考える必要があります。例えば、他社排除だけではなく、フランチャイジングの様に、ノウハウとパッケージ化したライセンスや、それによるグループ形成、他社特許からの防御としてのクロスライセンス、金銭化など、特許には多様な活かし方があり、目的によって、特許出願すべき国が異なります。例えば他者排除が目的であれば、まず自社のマーケット(国)に出願すべきですが、クロスライセンスが目的の場合は、相手のマーケットに出願する必要があります。特許出願の目的により、出願すべき発明も、特許明細書に記載すべき内容も異なります。
また企業活動の中で利益を生む部分を保護すべきなので、例えばプリンターよりカートリッジ、エスプレッソ装置よりコーヒーカプセル、映画配信より映画自体など、関連業界も含めて、将来の利益の源泉を考察してから特許出願する必要があります。
これらの点をお客様にヒアリングして明確にし、ディスカッションを通じて特許戦略を練り上げ、最終的にご提案にまとめることが、私たちの得意な支援領域です。

■北陸地域の企業や事業者の特性やビジネスの可能性はどのようなところにあると思いますか?
地域的なニッチ性に可能性を感じます。即ち、大手企業が参入する前に成功する技術やビジネスモデルを確立し易い点で有利です。近年は、垂直統合によって事業を支配するより、水平連携によって事業領域を広げる方が有利な場面が増えました。北陸地域で技術的またはビジネスモデル的に成功を収めれば、特許も含めたフランチャイジングにより全日本、全世界に事業領域を広げることもできます。その成功モデルを確立する地域として魅力的だと思います。
■北陸地域の企業を支援するとしたらどのようなことをやってみたいですか?
北陸地域には、全世界や全日本を視野に入れていない経営者の方が多くいらっしゃいます。単独で事業を広く展開するには、金銭的にも人材的にも多くの投資が必要なので、経営者が抵抗を持つことが多いようです。そこで、特許をテコとした事業の水平連携により全日本展開する、という可能性を提供したいです。
■今後の展望や取り組んでいきたいことについて教えてください。
特許は明確にドキュメント化されますが、ノウハウはドキュメント化されていることが稀なのでライセンスをしにくいです。そこで、特許に関連するビジネスノウハウをヒアリングしてドキュメント化するスキルと、その後に水平連携により事業を他地域に広げるスキルを定型化して、RICHと共に改善を重ねていきたいと考えています。
※このインタビューは2025年4月に実施しました。
龍華 明裕
RYUKA国際特許事務所 所長弁理士・米国弁護士
知財戦略に強みを有する国際弁理士で多数の実績を有する。取り扱い分野は特許出願(日本・米国)、ライセンシング、鑑定、意匠、商標等。 キヤノン株式会社ではG4ファクシミリ(デジタル通信FAX)を開発。通信回路、アナログ回路、画像処理、CPU周辺、共有メモリ回路、パネル、LCD、CCD、プリンタ、電源、およびモータ制御部のハード/ソフトの設計に従事。また放射ノイズ、伝導ノイズ、通信端末規格、FCC等の対応を経験した。 弁理士への転身後は、国内特許事務所でプリンタ、ファクシミリ、移動体通信、半導体、交換機、OS、超並列コンピュータ等の出願業務を経て、米国の法律事務所Cushman Darby & Cushman (現Pillsbury Winthrop)に勤務し、日本企業による米国での特許商標出願、特許侵害鑑定、侵害警告対応、ITC訴訟等の経験を有する。
【主な職歴・学歴】 東京大学工学部修士課程修了 キヤノン株式会社入社 1993年 国内弁理士登録 2012年 米国弁護士資格(カリフォルニア州)